固定資産税や都市計画税などの各種税金の増税や、周囲の土地の価値の上昇にともない、地代の値上げを余儀なくされることもあるでしょう。新たに更新料を設けなければならないこともあります。これらのやむを得ない事情において、地主は借地権者(借地人)に対して地代の値上げを請求できる「地代増額請求権」があります。しかし、地代の値上げや更新料の設定にともなって、借地権者とのトラブルに発展してしまうことも……。借地権者が地代を供託しており、借地権の売却を考えていると言われた場合、地主としてどのように対処すればよいのでしょうか?

借地権者が値上げに納得できないときに行う地代の供託とは?

何らかの理由で地代を値上げしたい場合は、「地代の値上げをしたいけどできますか?」にてご説明しています。地主による地代の値上げに対し、借地権者が納得しないことも少なくありません。借地権者が値上げ分の賃料を払いたくないため、これまでどおりの地代を支払おうとしても、地主側として納得できない場合は受取を拒否することもあるでしょう。このような場合に、借地権者は地代の「供託」を行う場合があります。

供託とは、地代や家賃に拘わらず相手方(債権者)が、債務者のお金などの返済目的物(ここでは地代)を拒否した場合に、法務局に預ける手続きを言います。地代を借地権者が供託する事で、借地権者は地主に対する不払いにはならないというものです。

借地権者は地主の許可なく借地権を譲渡できない

地主と借地権者との間に地代の供託が起きている状態は、双方の関係性に亀裂が生じている証拠といえます。そのような状況下でも、借地権者は底地の借地権を売却したいと考えることもあるでしょう。借地権の売却には、以下の3つが選択肢として考えられます。

1.借地権者が第三者に借地権を売却する

2.借地権者から地主に借地権を買い取ってもらう

3.地主と相談して借地権+底地をセットで売却する

1のように、借地権者が第三者に借地権を売却する場合、地主の許可が必要です。借地権者が無許可で借地権を売却した場合には、地主は契約を解除する権利があります。2や3のような場合は、地主としてどう対応するかを判断しなくてはなりません。

地主にとっても借地権者にとっても解決のチャンス

地代を供託している状態であるにもかかわらず、借地権者が借地権を売却したいといってくる背景には、借地権者側に何らかの事情が生じているか、借地権者側から係争関係を何とか解除したいという気持ちの表れであることが殆どです。

もちろん係争中なのだから地主から何も認めない。ということもあるのでしょう。

しかし、この申出を解決へのサインととらえ、一旦冷静になってみるのも良いと考えます。

地主にとっても借地権者にとっても、係争が続くことで得なことは無いのです。地主として将来この土地をどうしたいのか、他の資産と鑑み相続対策としてどうするのか、資産の有効活用としてどうするのが得なのか、一旦感情を抜きに、ビジネスライクに考えるチャンスと捕らえると良いと考えます。

借地権者と地主との係争の背景には、借地権の歴史あり。互いの感情の背景を理解しよう。

地代供託の理由は、更新料や地代、建替や増改築承諾料など様々な原因が考えられます。しかし、借地権者と地主との争いは、ほとんどが互いに相手の立場や考え方が分かっていないことから生じていることも事実です。

問題になっている借地権の殆どは、大昔から続いている借地権で、明治時代からの法改正などによる借地権の歴史的背景からきている地主の感情や借地権者の立場を、地主も借地権者も理解できていないことが原因になっています。

(※借地権の歴史参照)

供託された理由も踏まえて、解決策を専門家に相談するのが重要

地主にとって、借地権者からのアクションは、今後の資産形成を考えるチャンスであり、一度法的な見解や双方にとってのメリットを客観的に説明してくれる借地権に詳しい専門家に相談する事をお勧めします。

 

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