借地権付きの家を検討中のAさん
借地権付きの物件って安くて良い物件が多いのですが、いつか家を出ていかなくてはならないということで躊躇してしまいます。
また、住宅ローンも組みたいと思っているのですが、借地付きの物件でも可能なのでしょうか?

借地権の窓口 借地担当
ご質問ありがとうございます。
確かに、借地権付きの物件に対して不安を覚えるという人は多いようです。
それでは、借地権付きの物件を購入するメリットやデメリット、住宅ローンが組めるかどうかなどについて説明していきますね。


マイホームを買う際、不動産会社やネットなどで「借地権」という記載がある物件を見たことがあると思います。

借地権付きの物件は、場所が良かったり、広かったり、環境の良い比較的条件がよい、割安感のあるものが多いのですが、「借地だからいつかは返さなくてはいけない……」と懸念する人も多いことでしょう。

そこで今回は、借地権付きの家を買う場合に気を付けるポイントや住宅ローンが借りられるのかなどについて説明したいと思います。

本記事のポイント
1.借地権とはどのようなものかを理解しましょう。
2.借地権付き物件のメリット・デメリットを理解しましょう。
3.住宅ローンの利用と減価償却時の注意点について理解しましょう。

 

借地権付きの家を買いたい。 気をつけることは?借地で住宅ローンは借りられますか?

借地権とは

「借地権」とは、建物を所有する目的で地代(対価)を支払い、土地を賃借する権利です。

借地権には、物権である「地上権」と、債権である「土地賃借権」があります。一方、「所有権」とは、土地を自分のものとすることで自由にできる権利のことを指します。

市場に出ている殆どの一戸建ての物件は、土地所有権と建物所有権の販売です。しかし中には、土地が所有権でなく、地主から借りた土地(借地権)とそのうえに家を建て、建物とワンセットで土地が販売されているものがあり、これが「借地権付き物件」となります。

因みに、賃借権は以下の3つに分類されます。

・旧法借地権

旧法借地権とは、現在の「借地借家法」が施行(平成4年8月)される以前の借地法による借地権をいいます。旧法借地権は、期間を定めた借地契約の更新をし続けることで、ほぼ地主から更新拒絶をされることなく土地を賃借し続けられます。

旧法借地権においては、存続期間の規定がない場合には、建物が老朽化などで朽廃して消滅すれば自動的に借地権も消滅することとなります。

逆に、借地権は存続期間さえ定められていれば、更地でも借地権は消えないということとなります。(ただし、「建物を所有する目的として」という文言が契約書に入っていなくてはなりません。)

そのため、存続期間の規定がある借地契約においては、建物が朽廃したとしても地主側が借地権者に対して契約解除を求めるうえで必要な「正当な事由」には該当せず、土地を明け渡す必要はありません。

また、期間の定めがある借地契約では、建物が消滅した場合でも原則として立て直しを認める規定となっています。

・普通借地権

普通借地権とは、1992年(平成4年)8月に制定された「借地借家法」によって定められた借地権のことです。

借地権は契約更新を前提としており、地主側が契約を終了したい場合には正当事由が必要となります。

また、借地権の存続期間は、初回が30年、1回目の更新が20年、それ以降は10年となっています。

さらに、旧法借地権のような朽廃による建物消滅ではなく「滅失」と規定されています。

建物が滅失した際、建物を立て直したい場合には、地主の許可が必要になります。

特に、借地契約の更新後に建て直す場合、地主に無許可で実施すると、借地権を失う可能性があるため注意が必要です。

旧法借地権が借地権者寄りであったのに比べ、新法による普通借地権は地主側の権利も考慮したものとなっているのが特徴です。

・定期借地権

定置借地権とは、一定期間のみ土地を貸す権利のことで、原則として期間満了とともに土地を地主に返還する必要があるため、借地契約の更新がありません。

存続期間については、契約内容ごとに異なりますが、一戸建ての場合には「一般定期借地権」と呼ばれる存続期間が50年以上のものが一般的でしょう。

借地権付き物件のメリット、デメリット

では、借地権付きの物件を購入する場合の、メリットとデメリットについて説明します。

相場より安価なことが最大のメリット

借地権付き物件の最大のメリットは、やはり価格が安いことです。

通常、一戸建ての物件は建物と土地がワンセットになっているため、住みたいエリアによっては土地の費用が非常に高くなることが一般的です。

そのため、都心部で一戸建ての物件を購入するのは、非常にハードルが高いといえるでしょう。

しかし、借地権付きの物件の場合には、相場の6~8割の価格で販売されるため、地代を支払ってでも、よい物件を安価に購入できるというメリットがあります。

特に通常土地を購入した場合には、不動産取得税という税金を払う必要が出てきます。

さらに、固定資産税や都市計画税を毎年支払わなくてはなりません。

しかし、借地権付きの物件であれば、土地に関するこれらの税金が課税されないというメリットもあります。

借地権付き物件は、通常の一戸建て物件を購入する場合より安い価格でマイホームを持つことが可能です。

たとえば、都心の駅周辺の物件などの本来であれば手が届かないような物件であっても、購入できる可能性が高まります。

また、先々に備え貯蓄をしたい人や将来実家に戻る予定があるような人、また、子育てのために少しでもマイホームの予算を抑えたい人などにとっては、うってつけの物件といえるでしょう。

借地権付き物件でも住宅ローンは借りられる

借地権付き物件でも住宅ローンは借りられる

借地権付きの物件は、他人の土地に建物を建てることになるため、所有権の場合と比較して銀行の担保評価が低くなるというデメリットがあります。

そのため、場合によっては、銀行からの融資が受けづらくなる可能性もあります。

特に、定期借地権の場合は、期間満了後に更地で返還することが原則であるため、借地権の残存期間が少なくなるにつれ、建物を住宅ローンの担保にすることが難しくなります。

しかし、最近は、都市銀行からノンバンクまで多くの金融機関が借地権付き建物への住宅ローンを取り扱っています。旧法借地権の場合には、土地を借りる側の権利が強く借地権が無くなるリスクが低いため、融資が受けやすい傾向にあります。

とはいえ、金融機関から住宅融資を受けるには、借地権上の建物に担保を付けることとなり、地主から抵当権設定承諾をしてもらわなければなりません。

実際に購入する際、住宅ローンを組みたいのであれば、取扱の不動産会社などに事前に確認するようにしましょう。

建替え・増改築・譲渡に地主の承諾が必ず必要

借地権付き物件は、所有権のものと比べ、安価に購入することが出来る反面、気を付けなければならないこと(デメリット)もあります。

将来借地権を第三者に譲渡(売却)しようとする場合、建物の増改築・建替えをしようとする場合、地主の承諾が必要となり、その際、承諾料が発生することがほとんどです。

また、更新の時には地主から更新料の請求をされることがほとんどです。

借地権付き物件を購入しようとする場合には、その点について契約内容の確認が必要となります。借地権を多く扱っている専門の不動産会社などによく相談されるとよいでしょう。

減価償却時における注意点

事業目的で借地権付きの物件を購入した場合には、減価償却の計算方法に留意する必要があります。

一般的な土地に所有権が付いている一戸建て物件の場合、建物の価格のみが減価償却の対象となります。

したがって、購入金額から土地代を差し引いた部分が減価償却されることとなります。

一方、借地権付きの物件の場合には、売買価格の中に「借地権の対価」、「名義変更料」、「整地費用」などが発生していることも多く、これらを控除した金額が減価償却の対象となります。

よく借地権付きの物件は、取得時に土地にかかる税金が発生しないため、物件そのものの価格が減価償却の対象になると思われがちですが、それは間違いなので注意しましょう。

しかしながら、減価償却費を積み上げるという意味においては、売買価格に対する建物の割合が大きいため、借地付き物件は非常に有効な選択肢となるのは間違いないので、うまく活用するようにしましょう。

まとめ

今回紹介したように、借地権付き物件は、通常の一戸建て住宅を購入する場合と比較して価格が抑えられ、土地に対する税金もかからないなどのメリットがあります。

また、当然デメリットもありますが、借地契約期間内に支払う地代や想定する承諾料などの総額、所有権であったとしたら支払うであろう固定資産税や取得税の額などを考慮のうえ、所有権の物件であった場合との価格差の捉え方次第という部分もあるかと思います。

ご自身のライフプランと照らし合わせ、借地付き物件がマッチするかどうか判断されるのがよいでしょう。


借地権付きの家を検討中のAさん
ご説明ありがとうございました!借地付き物件のメリットとデメリットを理解したうえで、自分のライフスタイルに合うかどうかで判断していけばよいということですね。
また、住宅ローンも借地付き物件のものがあるということで安心しました。

借地権の窓口 借地担当
そうですね。
借地付き物件が、ご自身のライフプランに沿うものなのかどうか判断することが大事なのです。
また、借地権の窓口を運営する株式会社新青土地コーポレーションでは、借地・底地に関するお悩み・ご相談を併設する司法書士事務所、税理士事務所とワンストップでご支援していますので、是非ご相談頂けますと幸いです