「親から借地権と実家を相続したけど、老朽化がひどいので建て替えたい」といった方もいらっしゃるかと思います。親子二世代や三世代にわたって生活をしていれば、いつかはやってくる建て替えのタイミング。そんなときの対処方法についてご説明します。

借地での建て替えは可能です

地主さんの承諾を得ることができれば、借地であっても建て替えを行うことができます。そのため、まずは建て替えを検討していることを地主さんに相談してみましょう。もし、勝手に建て替えや増改築を行えば、最悪の場合は借地契約を解除されてしまう可能性もあります。

建て替え承諾料について

借地で建て替えを行う場合は、地主さんに「建て替え承諾料」を支払う必要があります。特段借地契約書に記載がない限り、承諾料に決まりごとはありません。 しかし、目安としては所有権価格の3~4%(借地権価格の5%程度という場合も)が相場といわれています。

ただし、木造から鉄筋コンクリートの建物に建て替える場合は、木造から木造への建て替え承諾料の1.5倍+条件変更手数料(更地価格の7~10%)が発生します。建て替える建築物の構造や内容によっても変わってきますので、ご注意ください。

【承諾料の目安(例)】

・所有権価格5,000万円(借地権の割合70%)の借地での建替え承諾料

▽条件変更の伴わない建て替え(木造→木造など 期間20年)

所有権価格5,000万円×0.03〜0,04=150〜200万円(借地権価格:3,500万円×0,05=175万円)

▽条件変更の伴う建て替え(木造→鉄筋コンクリートなど 期間30年へ変更)

建替え承諾料⇒上記金額×1.5程度+条件変更料

ただし、地主さんから承諾が得られない場合は厄介です。「建て替えしたいけど地主さんが承諾してくれない」「建て替え承諾料でトラブルになってしまった」という場合は、裁判所に借地非訟事件の申し立てを行うことになります。建て替えを行う際は、まず専門家に相談して承諾料の目安を知っておく必要があります、そのうえで地主さんとの承諾料の擦り合わせをしてみるとよいでしょう。「建て替え承諾書」を出してもらえれば問題なく建て替えができます。

借地非訟事件になれば費用や時間もかかりますし、地主さんとの関係がギクシャクしてしまうことも……。借地非訟によって建て替えができたとしても、地主さんとはその後もお付き合いをしていく必要があります。だからこそ、平和的に解決できるように努める必要があります。

建替え承諾料、条件変更承諾料についてもっと詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご覧ください。

http://shinseiland.com/lease/fee.html

◎借地非訟って何?

土地の賃借契約で借地権の譲渡や売却、借地条件の変更などでトラブルになった場合、地主さんに代わって裁判所から承諾を与える手続きを借地非訟といいます。この借地非訟を行うことで、「地主さんが建て替え承諾書を出してくれない」「建て替え承諾料で折り合いがつかない」といったトラブルを解決できます。

定期借地権の場合も建て替えはできるの?

旧法借地権や新法の普通借地権なら、地主さんに承諾を得ることで建て替えができます。しかし、新法借地借家法で新たに設定された「定期借地権」は、少し話が違ってきます。最近増えている定期借地権付きのマンションや一戸建てですが、契約期間中に建て替えを行った場合に借地人さんが不利になるため、一般的には建て替えを行うことはできません。

借地人さんが不利になる理由としては、建て替えを行っても存続期間が延長・更新されないことが挙げられます。旧法借地権および普通借地権では、建て替えを行えば、存続期間が20年(木造住宅の場合)延長されます。しかし、定期借地権の場合は、建て替えを行っても存続期間の残り期間は変わりません。つまり、45年目で建て替えをしたら、5年しか住めず、5年後には更地にして地主さんに返却しないといけないということです。

定期借地権が登場したことで、手ごろな費用で借地権を購入でき、マイホームを手に入れやすくなったという側面もあります。「自分や子供世代だけが生活できればいい」「建て替えを検討していない」という方にとっては定期借地権もおすすめです。また、どうしても建て替えたいという場合は、協議や取り決めを行うことで、建て替えできるケースもあります。

▽定期借地権とは?

定期借地権は、「一度貸したら土地が戻ってこない」という借地トラブルを解決するため、平成4年に施行された「借地借家法」で誕生しました。従来の借地権とは異なり、初回契約時の存続年数50年(新法の普通借地権および旧法借地権では初回30年※非堅固な住宅の場合)と長く設定されています。そのかわり、原則的に契約期間が満了した時点で終了となり、更新ができません。また、契約満了時には、更地にして地主さんに土地を返却する義務があります。

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